ボランティアを国民活動に

令和元年の秋は、毎週続く台風の大雨で、中部から関東、東北にかけて、広範囲な被害が発生し、10月末になってやっと復旧活動が始まり、ボランティアが各地から集まって来るニュースが目立ってきた。内閣府とJVOADがまとめた報告では、ボランティアが少なくなっているという事だが、ボランティアを増やすという対策が可能なのだろうか。元来個人の善意と評価されきた活動だが、需要が増えたから供給を拡大するというようにはいかない。政府が被災自治体に送る物資のプッシュ型支援のように、動員によるボランティア派遣を行政が仕切れる手立てはない。

昨年の西日本豪雨被災地

抜本的に、ボランティアの参加者を増やす方法は、政府が本気で取り組めばできることだ。ボランティア休暇制度が導入され、大企業では積極的に運用している例もあるが、年間一人1週間の災害派遣をする企業に、何らかの税制優遇措置を課すとか、本人の交通費等を免除するとかはできるのではないだろうか。兵庫県が台風19号の被災地に行く県内のボランティア団体(5人以上)に一律20万円を支給することを決めている例もある。

さらに、全国の大学に、学生のボランティア参加を義務化し、年間日数を設定して、参加学生には校外演習としての単位を与え、学校には文科省から何らかの特典を付与する等決めてはどうだろうか。私も阪神・淡路大震災では4大学からの依頼で、約60人の学生のレポートを読ませてもらい、単位を与えた経験がある。

1995年阪神・淡路大震災時のボランティア

昔一部の意見に18才からの2年間、青年期を自衛隊に入隊させるという案が取りざたされた時期があったが、それよりもこのような社会貢献体験を義務化するという案は無謀だろうか。ボランティアをあくまで個人の善意に頼っていては、少子化が進み人口減少にありながら、温暖化で気象災害が多発する傾向が見えている将来の日本の安全は、どうやって守り続けられるのだろうか。イデオロギーはともかく、真剣に日本の将来を考えないと、優秀な人材が海外に逃亡することになってしまいそうな気がする。

2019/10/31 伊永 勉